お知らせ
DX総合展を終えて:大エージェント時代へ。
DX総合展を終えて。大大現場エージェント時代へ。
代表取締役 丸茂 瑞喜
先日、BizCrew Japan主催の「DX総合展」に出展いたしました。 お客様との対話を通じて、プロダクトに対する視点が大きくアップデートされ、大変充実した時間となりました。
現場から見えてきた関心の変化
まず、AIへの関心が「知る」段階から「使いこなす」段階へと進み始めているということです。 とりわけ建設業の皆様からは、2D図面からの積算支援やBIMを活用した自動工程生成といった、より実務に直結するテーマへの具体的な質問が多く寄せられました。
以前であれば「AIで何ができるのか」という抽象的な会話が中心でした。 しかし今回の展示では、「自社の現場にどう適用できるか」という視点での対話が圧倒的に増えていました。 この変化は、ChatGPT以降の生成AIが社会に浸透した結果、AIが単なるツールではなく、業務構造を変革する前提条件として認識され始めた証左だと感じました。
「産業特化AI・AIOps」というこれから数年間の主戦場
技術には“ハイプサイクル”という考え方があります。 新しい技術が注目を集め、過度な期待を経て一度は幻滅を迎え、そこから現実的な普及段階へと進むというサイクルです。
現在の生成AIは、まさにその「啓蒙の坂」を登り終えようとしている段階にあります。 サム・アルトマン率いるOpenAIもいよいよ上場準備を始めており、2022年秋のGPT-3.5リリースに端を発した生成AIブームは、一つの節目を迎えると考えられます。 (GPUの購入を検討されている建設企業様におかれましては、現状は明らかに高値圏にあるため、OpenAIの上場が落ち着くまでは、ソフトウェアやアーキテクチャ設計の評価・検討に注力されるのが賢明かと思われます。)
これから問われるのは、汎用AIをいかに産業特化型へと落とし込むかであり、同時にオープンソースモデルの活用と、コスト面での最適化(AIOps)が重要となります。
積算・現場管理・工程管理など、あらゆる側面で「見せかけのUI」ではなく、人への技術継承を見据えたデータ設計、そして現場ロボットにタスクを学習させるための最適なデータ構造が問われます。 便利なエージェントの実装はもちろんのこと、できることであれば、私たちと長期的にお付き合いいただける企業様と共に、サイロ化されたデータの統一、ロボットが現場で動くことを前提としたモデル現場での検証、そして全体的なデータ再設計に取り組ませていただければ幸いです。
私が東急建設様で修行をさせていただいているように、他のメンバーも皆、建設現場に出てニーズを深く把握し、現場で生きるソリューションを皆様と共に考えてまいります。
長年、経験と勘に支えられてきた領域だからこそ、AIに置き換えるためには、データの構造化だけでなく、“現場の文脈”を理解し、かつコストも最適化するアーキテクチャ設計が不可欠です。
引き続き、腰を据えてAIMと関わってくださる建設業の皆様からのご連絡をお待ちしております。
課金モデルの変化
以前よりSalesforceの株価が全盛期の2〜3割水準に低迷しているように、「SaaS is dead.」と言われる時代に入りつつあります。 今回、日本でもついにお客様から「シート課金ではなく、働いた分だけ課金できないの?」というお声をいただきました。
多くの方々が「AIを使うこと」自体ではなく、AIがどれだけ業務を自動で“完了”できたかに価値を感じていることの証明だと思います。 この点については、各社様とのトライアルを通じて、成果に納得感を持った上で課金体系を共に設計していければと考えています。
SaaSからエージェントへ:OfficeGenieが目指す方向
自社プロダクトである「OfficeGenie」も、今回の展示で多くの方にご関心をお寄せいただきました。
このサービスは、RAG(検索強化生成)とAIエージェントを組み合わせ、Slack・Gmail・Google Driveなどと連携して動作する“実行型AI”です。
たとえば、見積依頼メールが届くと、AIが自動的に添付ファイルを解析し、社内データベースから在庫状況を照会し、その結果をもとに納期や回答文面まで生成します。
RAGやOCRといった単一技術を組み合わせ、一連の業務フローを“自律的に進めるAI”として構成する。 これこそ、私たちが「AIエージェント」と呼んでいるものです。
展示を通じて強く感じたのは、こうしたAIが“検索”や“支援”を超えて、実際に行動する段階に入っているということです。 AIが「考える」だけでなく「動く」ようになる。 そこにこそ、次の産業変革の起点があると確信しました。
異業種展開と「月面無人建設」への布石
AIMでは現在、建設業を中心にAI導入を進めていますが、同時に製造、ガス、放送といった他産業への展開も始めています。
産業ごとに異なるのはデータの形ですが、共通して求められているのは「構造を理解し、意味を判断し、適切に行動するAI」です。
この構造的思考を突き詰めた先に、私たちが見据えているのが「月面無人建設」や「都市OS」です。 あらゆるデータが低コストで収集され、自律的にAIが修繕工事依頼や修繕金積立を行う未来を考えると、建物は「都市の中で自律的に再生産されるシステム」として捉えられるようになります。 この未来では、ゼネコンも巨大受注産業のスタープレーヤーではなく、人間や国家にとって最適な目的変数を設定し、更新を担う企業へと変革するでしょう。
AIとロボティクスが協働し、人間の知能を拡張する。 それは、地上のDXの延長ではなく、“人類の知的インフラ”をつくる営みであると感じています。
このように建設産業を捉えると、建設だけにフォーカスした事業は不十分であり、本気で建設産業の未来を考えるためには、部材の設計・製造を担う製造業、土地選定から維持管理までを担う不動産業の皆様とも連携し、「都市OS」を見据えた研究・開発を進めていく必要があります。
引き続き、未熟者ですが私共をよろしくお願い申し上げます。
Mizuki Marumo/丸茂 瑞喜
代表取締役
23歳。複数社インターン、<br> 建設特化のAIスタートアップのCOO~AIM株式会社代表